慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)とは、腎臓機能が徐々に低下している状態であり、適切な治療を行い、末期腎不全(=透析、移植が必要な状態)へと進行することを減らす必要があります。 アメリカで提唱された比較的新しい考え方ですが、現在日本には約1300万人(成人の8人に1人)の患者さんがいると推定され、新たな国民病ともいわれています。 原因には様々な腎疾患や全身疾患がありますが、糖尿病、慢性腎炎、高血圧などが代表的です。
慢性腎臓病は、これだけ頻度が高く、重要な国民病にもかかわらず、患者さんの大部分は何の症状もないまま、徐々に腎機能が低下していき、末期腎不全へと進行していきます。
しかし、慢性腎臓病を早期発見・早期治療することによって病気の進行を抑えることができます。
むくみ、尿量の増減、体のだるさ、食欲がないなどの症状が認められた場合には、すぐに病院で検査を受ける必要があります。また、検診での尿潜血、尿タンパク、貧血、腎機能低下の指摘がある場合には早期発見のために受診をすることをおすすめします。
慢性腎臓病は単に腎臓だけの問題ではなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管障害のリスクを高めることがわかってきています。またCKDの発症や進行には、高血圧、糖尿病、脂質異常症等の生活習慣病が関係するほか、肥満、食塩の過剰摂取、喫煙などの生活習慣が深く関与しています。
どのCKDにも共通する治療は、生活スタイル(運動、食事、喫煙)の見直し、薬物療法(腎機能を補完、高血圧治療)が重要となります。 早期に治療を開始することで、
1)心血管障害のリスクを軽減させる
2)末期腎不全にいたることを回避、遅らせること
が期待できます。
残念ながら治療の甲斐なく末期腎不全となり、人工透析が必要となった場合でも、適切な時期にシャントを造設し、透析導入を行うことで、安全に透析導入ができ、その後の予後改善につながります。透析が必要な時期になりましたら、患者さんだけではなくご家族にも腎不全、透析療法についてのご説明をし、透析に関する知識の向上、精神的ケアにも努めております。