小野院長が不定期に更新するコラムです。診療内容の解説や健康維持のアドバイスなどをお届けします。
膀胱炎を疑う場合には、尿検査をおこないます。排尿開始時の尿は、出口(尿道口といいます)付近の細菌や白血球が混じりますので、途中の尿(中間尿)をとっていただきます。尿中に一定数の白血球、細菌が確認されれば膀胱炎の診断となります。また原因となっている菌を調べるための培養検査(尿培養)をおこないます。
治療には抗生物質を用います。3日ほど使用すると症状は改善しますが、再燃する場合もあり、医師の指示通りの期間服用するようにしてください。膀胱内に尿が長く留まると、細菌が繁殖しやすくなるので、十分に水分をとり、こまめにトイレにいくことが大切です。
薬を飲み終わったら受診をして、膀胱炎が完全に治っているかを確認してください。症状がよくならず、尿検査の所見が改善しない場合には、背景となる病気が隠れていることがあります。膀胱癌、膀胱結石、男性ですと前立腺肥大症が潜んでいる可能性があります。その場合でも超音波検査など身体に負担のかからない検査からすすめていきます。
また、尿培養をおこなうことで、使用した抗生剤と細菌との相性を調べています。処方された抗生物質の相性が悪い(効かない)場合には、培養検査の結果で相性が良い(効果がある)抗生物質に変更することがあります。最近は耐性菌という抗生剤への抵抗力が強くなり、薬への耐性をもった細菌が現れています。培養検査の結果を確認し、的確な種類と期間の抗生物質の使用がますます重要となってきています。
尿の観察をするときに一番変化に気がつくのは“色”ではないでしょうか。
「尿は健康のバロメーター」とも言われているように、色の異常で重大な病気がわかる場合があります。
健康な尿の色はうすい黄色~うすい黄褐色と変化に富みます。
これは、血液を分解した代謝物の色で、常に一定量が尿中に排泄されます。
水分を多く摂取したときなど、体内の水分量が多い場合には色がうすくなります。逆に、起床時、スポーツや発熱した時には、少し濃い色の尿がでます。
また、尿の色は食事、飲んでいる薬(ビタミン剤、抗生剤)によっても変化します。
その中でも、受診をすすめする尿の色の異常は、
・白色(混濁):尿路感染症(腎盂腎炎、膀胱炎)のときにみられます。
・濃い茶褐色:肝機能障害で尿の中にビリルビンが混じるときにみられます。
・赤色(ピンク):尿に赤血球が混じる、血尿と言われる状態です。尿路結石症、尿路感染症、尿路腫瘍(特に膀胱腫瘍)が考えられます。
尿の色調で気になることがありましたら、重大な疾患が隠れている可能性もありますので、泌尿器科での検査をおすすめします。
「尿の泡立ちが多いかな?」と病気とのつながりを心配されているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
尿の中には“ウロビリノーゲン”という粘り気のあるものが含まれており、これが“泡立つ”原因になります。尿が濃い起床時や、運動後の排尿時には泡立ちが強くなります。しばらく便器の中の尿をみていると消えていく泡は心配ありません。
しかし、毎回泡がたち、細かな泡がなかなか消えない場合には、病気があって他の泡立ち成分が含まれている場合があります。泡立ち成分としては、尿タンパク、尿中の糖(尿糖)の増加が考えられます。尿タンパクは、腎機能の低下、尿糖は糖尿病の可能性があります。
実際に尿の泡立ちが気になり当院に来院される方でも、尿検査に異常のない方は少なくありません。
尿の泡立ちが病的なものか正常範囲のものかは尿検査でわかりますので、心配な場合には泌尿器科受診をしてみてはいかがでしょうか。
おしっこ(尿)のにおいがきになることはありませんか?
通常、排尿直後の尿はわずかなにおいしかありません。尿を放置しておくと“つん”とした刺激臭がします。これは細菌の力により尿中の「尿素」が分解されて「アンモニア」になるためです。
起床時やスポーツ後、水分不足で尿が濃い時にも、尿のにおいが強くなりやすくなります。また、排尿直前の飲食内容も影響をうけます。香辛料やコーヒー、ニンニクを食べた後に同じにおいがするのは、ほとんどの場合問題ありません。
排尿直後からの刺激臭は、尿の通り道に細菌感染(膀胱炎、尿道炎)をおこしている可能性があります。また、甘ったるいにおいがする場合には、糖尿病の疑いがありますので、病院で尿検査を受けることが望ましいと考えます。